17.12.17

着物の柄に込められた想いを知ろう「吉祥文様」③日本の自然~山・海・空

 

“吉祥文様”とは婚礼衣裳に描かれる縁起の良い柄で、花嫁の幸せへの願いが込められています。
日本伝統の吉祥文様の中から、今回は山や海、雲、太陽といった日本人ならではの繊細な自然観と豊かな感性が感じられる文様について紹介します。

 

【山:富士山】

吉祥文様の多くは、もともと中国から伝来したもので、そこに日本独自の思想が加えられています。

中国では山といえば仙人が住んでいる伝説上の蓬莱山(ほうらいさん)から生まれた図柄ですが、日本においては日本一の山・富士がめでたさの象徴として好んで描かれるようになりました。

■富士

富士山を格調高く描き上げた、一枚の絵画を彷彿とさせる華麗で豪華な打掛。

雲を見下ろし堂々とそびえ立つ富士は誇り高く、のびやかに裾野が広がる美しい姿が印象的。

 

 

【波:青海波】

波を幾何学模様で表した青海波(せいがいは)の発祥は古代ペルシャといわれ、日本では平安文学を代表する「源氏物語」で光源氏が舞う同名の舞曲から、その名前が付けられたといわれています。

無限に広がる波の文様は未来永劫をイメージさせ、人々の平安な暮らしへの願いが込められています。

■鳳凰青海波打掛

能衣裳に用いられる技法「唐織」(からおり)で青海波を全体に描き、四季折々の花々に繁栄の象徴である鳳凰を織り込んだ、格調高い打掛。

 

 

【雲:雲取】

古代中国では、神や仙人が住む山から湧き出る雲を「雲気」と称し、めでたいことが起こる前兆といわれてきました。

この思想に影響を受け、日本でもさまざまな雲の形がパターン化されています。

打掛のメインとして描かれることは少ないですが、柄を区切ったりつないだり他の図柄とともに用いられる雲の図柄の代表的な「雲取」(くもとり)柄をはじめ、名脇役の文様としてきものの柄を構成しています。

明綴手刺繍 桜花京洛の調べ

古より栄えてきた京の都。繁栄する洛中の様子を、おめでたい事の起こる兆しとされる「瑞雲」(ずいうん)の中に描き上げている。

 

■瑞鳳文

上品な雲取に鳳凰、おしどり、八雲、花菱、菊、菖蒲、桜など数々の吉祥文様が描かれ、珍しい水色を効かせた配色でまとめた。

 

■華瑞松

日本の代表的な古典柄を儀式の衣に描いた友禅の打掛。紫色の雲取が上品でやわらかな表情に。おめでたい文様を気品あふれる古代友禅で染め上げた一着。

 

■緑地に紺青松に花車

打掛には珍しい寒色系の色合いで雲取文様に松、花車と四季花、比翼の鳥が描かれ、豪華でありながらもどこか落ち着きを感じさせるアンティークの打掛。

 

 

【太陽】

日本の最高神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)の象徴である太陽は人々を照らし、恩恵をもたらす、日本の国旗にも描かれているほどに偉大な存在です。

太陽の丸い形、赤い色には魔除けの力が宿るとも考えられ、古来から崇められてきました。

■東天皇寿

大いなる太陽に向かって飛ぶ千羽の鶴が大宇宙に育まれるという、スケールの大きな作品。